愚かな国アメリカと“BOBBY”
予定を変えて、今日いまさっきギンレイで観てきたばかりの映画の話を書く。今最も重要かつ極めて今日的な必見の素晴らしい映画だからだ。
その映画とは、「BOBBY」。エミリオ・エステベスが監督し、自らも出ている超豪華キャストによるホテルを舞台にした群像劇。タイトルのボビーとは、あのJFK、ケネディの弟で、同じく凶弾に倒れたロバート・F・ケネディその人のことで、その1968年6月5日、暗殺当日の舞台となったLAの名門ホテルの朝から悲劇の瞬間までを時間を追って、居合わせたホテルの人々――スタッフ、客を問わず30名近い人々の様々な人生を描いた傑作である。
実在の有名な事件を元にその当日を描いたとなると、ドキュメンタリーのように思われるかもしれない。しかしこの映画はボビーは当時の映像でしか登場しないし、あくまでも主役は市井の人々――厨房で働くヒスパニックたちや黒人、その差別的な白人上司、ホテルの支配人とビューティサロンで働くその妻、落ち目のディナーショーの歌手と元バンドマンの夫、退職したドアマン、ボスの愛人の電話交換師、その他客として訪れた多くの人々であり、悲喜こもごもの彼ら人生模様を通して当時のアメリカの現実が、何故にボビーがアメリカの希望の星と仰がれたか見事に描かれ、その悲劇の瞬間まで息もつかせない。
ドキュメンタリーよりも鋭く、ベトナム戦争と国内のテロと暴力に悩み苦しむ当時のアメリカを描いて、実は今日アメリカが再び繰り返した愚行、イラク侵攻の非を告発した素晴らしい作品なのである。必見!