では、その中身について
懐かしい雑誌について書いている。やはり内容についてもふれないわけにはいかないだろう。
かつて、この国には深夜放送の時代というものがあった。今でも早起きや不眠がちの老人たちが『ラジオ深夜便』などを聴いているようだが、当時のリスナーは当然10代の若者たちで、そんな彼らに向けての唯一の情報誌がこの『深夜放送ファン』であった。
表紙に“キミが語りボクが歌う放送と音楽の情報誌”とあるように、主にラジオでの人気者特集、ということは若手人気ミュージシャン中心の記事が多く、次いでリクエストベストテンなどの洋楽情報、各放送局の人気DJの情報などもあり、当時のラジオの状況が逐一反映されている。もちろん文化放送のレモンちゃんこと落合恵子女史も自らのコラムを持っているので、人気のほどが窺えよう。
この手元の1972年夏の8月号では、表紙には「アイドル特集:ジローズの解散後の変身」と見だし付きでジローズの二人が大きく載って、他の見出しとして、「特報:R・ストーンズの大公演旅行アルバム」、「可愛い放送タレントの水着姿を写したゾ」「カラーでバッチリ!!拓郎ちゃんの結婚式」とあるのが感慨深い。
実際に中身は、まず表紙をめくると、“結婚しました。”という見出しで軽井沢の教会から二人出てくる白いスーツ姿の吉田拓郎と桂子ちゃんの晴れ姿がカラーで掲載されている。このとき拓郎氏は初婚で、いったいその後何人と結婚し現在は誰が奥さんなのかもうわからないが、この相手の人は六文銭のアイドルだった四角桂子。仲人は小室等夫妻とあり、式のあと出てきた二人を待ちかまえたファン報道陣が一斉に「結婚しようよ」を合唱し、胴上げしたとある。うーむである。
そして、はしだのりひことケメ(佐藤公彦)のファッション特集グラビアがあり、この号の特集記事、ジローズ二人の記事となる。
ジローズというと大ヒット曲「戦争を知らない子供たち」で、杉田二郎は知っていても相方の人、森下ジンタンはあまり記憶に残っていない。二人とも同名のじろうなので、ジローズと名乗ったのだがジンタンは今どうしているのだろうか。この特集ではグラビアを交え解散後の二人の心境と近況を報じている。そして、田川律によるストーンズのサンフランシスコでのライブの模様と、モノクロのグラビアが3p。グラビアページの最後は、飛び出したフレッシュ・アイドルとして、天地真理、南沙織に続いてCBSソニー3人娘の一人に決まったばかりの奈良富士子が見開きで大きく紹介されている。
ケメといい、奈良富士子といい、増坊には半ば忘却の彼方にいた人で今回これで久々に思い出した。表紙の水着姿の「可愛い放送タレント」とは、マリ・クリスチーヌと樹本デラで、だからこそ古い雑誌は面白く価値が(何の?)あるのだ。
まあ、当時を知らない人には何の興味も価値もないだろうけどね。