その乗り心地
さて、最後に肝心の乗り心地について書こう。
実は書き忘れていたが、こうした実用車タイプの自転車は、変速ギアは付いていない。軽快車なら3段ギアが今では一般的だろうが、どれもシフト段数はシングル、つまりギア無しなのだ。購入前はそれが気がかりだった。質実剛健の車体はいいけどかなり車体も重いわけで、ギアがないと荷物を載せた場合疲れるのではないかと考えていた。しかしそれは杞憂に過ぎなかった。
予想していたよりも遙かに軽やか、というよりも力強く、一こぎで進む距離が大きい。それも力をうんと入れないとならないというほどでなく、普通にペダルをこげばぐんぐん進んで、気がつけばかなりのスピードが出ている。これは予想外だった。今までの3段ギアの快速車より普通の段階で早く走れる。快適である。これは乗った者でないとその感じは伝わらないだろうから喩えて言うと、今どきの若者――都心で生まれ、渋谷で青春期を過ごし、子供の時はアトピーや喘息持ちの虚弱体質で食べ物の好き嫌いも多く、そのくせ背だけはひょろひょろ高く伸び、見かけだけはロン毛でイケメンのカッコイイ男と、長野県の山間の町に生まれ、親父の代まで強力の家系に育ち、幼少の頃から野山を駆け回って遊び、農林高校を出て今では営林局に勤めて山岳ガイドを趣味としている若者ぐらいの差がある。もちろん、前者が今まで乗っていた軽快車で、後者が今回買った実用車だ。ともかく走っていてもハンドルが安定していてふらつかず信頼感この上ない。ちょっと高くても買って間違いはなかった。これならどこへでも安心して行ける。荷台に何十キロも本を積んでもふらつかない。基本性能がそもそも段違いな感じだ。
坂道などではやや重い感じがするが、3段ギアの自転車だって、ギアを変えてもペダルが軽くなり空回りするだけで、決して早く走れるわけではない。それより立ち乗り気味にペダルをしっかり踏みしめればフラフラせずにぐいぐい上れるし、よほど確実かつ安全だ。
というわけで良い買い物をした。防犯登録もサービスで向こうで付けてくれたし。ただ、それが福岡のナンバーなのと、しっかり「九州車両」というステッカーが後輪に貼ってあるので東京では人目を引く。あとは100%満足している。たかが自転車だと考えていたが、人生に彩りを添えてくれた。