それは“通”ではなく、物好きと人は呼ぶ
二村定一、という歌手を今の人はご存じないだろう。いや、昔の人だって知っている人はもはやほとんどいないはずだ。いたとしたらよっぽどの年寄りだろうし、その御歳の人は、パソコンも扱わずブログもまず読まないだろうから、知っているわけがない。
ふたむらていいち、と読む。明治33年に生まれて、主に昭和の初めに活躍し、戦後間もなく死んでいる。今ではほとんど忘れられた歌手だが、おそらく、日本初のポピュラーソングを吹き込んだレコード歌手であり、代表曲に、「あお空」「アラビアの唄」、それに、昭和三十年代にフランク永井によって大ヒットした「君恋し」も元々は彼がオリジナルで、かつては人気歌手、大スターであった。増坊は彼のファンであり、実は長年、彼が残した音源を探し求めているのだ。そんな昔の人だから、彼の歌声を今日聴くことはおいそれと簡単なことではない。
先に挙げた代表的ヒット曲は、戦前の歌謡曲オムニバス盤にはたいがい収録されているから、通な音楽ファンの方は、その名やその美声を聴いたことがあるかもしれない。しかし、彼にはそれ以外にももちろん数々の録音があり、そうした曲が入ってるオムニバスもあれこれ探し求めたが、できれば彼だけのアルバムは手に入らないものかとずっと考えていた。そしたら数年前、ビクターから『昭和を飾った名歌手たち』というシリーズが出ていて、その中の一枚として彼の個人アルバムが出ていたのだ。先日のこと、偶然ようやくそれを知り、あちこちのCDショップに問い合わせた。しかし‥‥もはや時遅く、すべて売り切れてしまっていて、またまた“幻の歌手”となってしまった。※どうしてこれが“商売”と関係あるのか、おいおい書いていきます。
★↑これがその彼のアルバム。画像はあっても未だ手に入らない。