注文キャンセルの話
さて、ささやかながらも本の注文は続いているという話をした。店主のやる気の無さとはうらはらに。だからこそ、ここで気合い入れて、たくさん新規に本を投入して、沢山売って沢山稼ぎたいと思うのだが・・・。
ところが、最近、注文が届いてもそれがキャンセルとなることも多い。思い当たる理由は、一つ、小泉郵政改革のおかげである。
他の店ではどうしているのか知らないが、ウチでは、自店売りの本に客からの注文メールが届くと、それですぐ発送するのではなく、必ず、送料代、振り込み手数料代など、個別にいくらかかるか細かくメールで告知し、その総額で了解して頂けたかどうか、再度、相手からの返信メールを待って、正式な商談成立としている。何のことか実際に説明すると、例えば、500円の本に注文が届いた場合、その送料代として、300円、さらに、郵便局から、ウチの口座への郵便振替払込票の手数料代100円が別途かかることなど、総額で900円となることを知らせて、それでかまわないかと客に確認して、了解のメールを返信頂いてから本の発送としてきた。
ところが、今年に入って、注文が届いて、こちらからこうした総額代金を知らせると、それきり「返信」がなかったり、「すみませんが、今回キャンセルさせて下さい」との返答があったりと、キャセルがかなりある。大した客数ではないが、記憶を辿ると昨年まではキャンセルは一件もなかったはずで、どうしてかと思う。考えられる理由として、この春から郵政公社が、振り込み手数料を70円から100円に値上げしたことだ。たかが、30円。大した額ではない。でもウチのような極端に格安の本ばかり扱っている店では影響は大きい。まあ、実際の損失ではないわけだが。
今は理由あって休止しているが、自店舗では200円均一コーナーがあって、今も200円以下の本も扱っているし、ウチは他の店より販売単価が低い。例えば、その200円の本に注文があったとする。それに、送料が仮に300円、それに、払込手数料が100円かかるわけだから、本代そのものは安くともお客が本の購入に関して実際に払う総額は、600円にもなる。それを知らされると、はたと考えてしまうのではないか。よほどどうしても欲しい本なら別だが、買い物というのは勢いであり、一度立ち止まって冷静になると、そんなにするのなら今回はやめようか、となるのだろう。その気持ちもよくわかる。自分だって、200円の本に、400円も出さない。200円なら欲しい本でも600円なら欲しくない。それが人情だ。
他の店だと、この振り込み手数料を店側が払うところも多いようだ。つまり、あらかじめ本の売値にそれも付加しておけば良いのだ。ウチでも1000円以上の値の付く本なら、店側の負担とすることも多いが、そもそもが200円の本に手数料100円を払ってたら、儲けなんか出ない。テマヒマ考えればそんな本はそもそもサービスというか見切り品なのだから、売値200円が限界ともいえる。一冊三千円の本と200円の本と、発送、梱包にかけるテマはまったく同じなのである。
先の総選挙で自民党が大勝し、郵政民営化法案が成立するまではこんなことはなかった。たかが30円の値上げだが、手数料が70円なのと、100円の差は意外に大きいとこのところつくづく思い知った。いっそ、こうした総額などいちいち知らせて客の確認をとることなく、注文が届いたらすぐさま本を送ってしまおうかとも考えている。でもそれがまだできない。このこだわりは何なのか、自分でも不思議に思う。
しかし、商売とは相手の衝動買いによるところが大きいのだから、何とか客の買う気をうまく逃がさないようにするにはどうすべきか、課題は尽きない。何かうまい手はないだろうか。