いつまでも旅行気分でいられない。そろそろ本腰入れて商売に復帰しないと、お客様から忘れ去られてしまうし、一年なんてあっと言う間、人生も残り少ないのである。
昨晩は、近所に住むネット古書店Nさんのところで、久々に飲んだ。その人は、増坊とほぼ同時期にこの「商売」を始めたのだが、増坊と違い真面目にせっせと商売に励み、早くもその品揃えとセンスの良さで、業界でも知られるようになった。その一歩も二歩も先を行く彼がこの度、正式に古書組合に加盟したというので、話を聞かせてもらいに行ったのだ。
今回知ったことだが、組合に加入するのには、東京の場合、現在は40万円もかからないということだ。以前はもっと高く、地域にも違うのだろうが70万円ぐらいしたかと思う。今の価値観からするとずいぶん安くなったし、店舗がなくともかまわないので、それなら増坊にも手が届くように思えた。
二人とも将来の夢は、やがては小さくても実際の店舗を持ちたいと昔から語り合ってきた仲なのだが、彼の話だと、他の店舗を持つ先輩から話を聞くと、今はどこも店売りは苦しく、たとえあの神田でも店舗だけで儲かっている店は少ないらしいとのことだった。確かに今は本は総じて値崩れを起こしている時代だし、新刊、近刊の類は近所にブック・オフのような新大型古書店があれば、客はみんなそっちへ行くだろうし、店舗が自分の持ち家ならともかくも賃貸料など考えると、家族経営でやっていくとしてもよほど毎日相当の売り上げがないと難しい。
だとしたら、店舗など持たずに通信販売だけに専念した方が良いかもしれないと話合ったのだが、この場合の「通販」とは、自サイト直売もだが、アマゾンとかで中間搾取される大企業の手下に甘んじるのではなく、古本屋の専門サイト、“スーパー源氏”や“日本の古本屋”に登録しそちらで売ることだ。特に日本最大の古書サイト、「日本の古本屋」は、正式な古本屋として古書組合に加盟しないと参加できないので、本当の愛書家を相手に良い本を売っていこうと考えるのなら、やはり組合に入ることが第一歩だと、増坊も頷くところ大であった。
そのための資金を作るにもまずは、増坊も自店売りに専念していかないとならないのだが。