笑いの後に苦い思いが…
飯田橋ギンレイにようやくソン・ガンホ主演の話題作、『大統領の理髪師』がかかったので遅ればせながら観てきた。韓国の1960年の李承晩政権の退陣から1961年の朴正熙による軍事クーデターによる政権誕生、そして1979年の彼の暗殺、全斗煥政権誕生まで、これまで韓国映画界では描かれなかった「圧政の時代」の近現代史を庶民の視線でリアルに描いている。ふとしたことから朴大統領の床屋となったガンホ演ずる無学な床屋が、官邸に出入りすることとなり、数々の歴史の現場に立ち会うこととなる。朴大統領に同行し、アメリカへ行きニクソン大統領と一緒の画面に登場するなど、いわば韓国版『フォレスト・ガンプ』といった趣もあるが、一面、悪名高い軍事独裁下のこと、大統領府のお膝元である彼の町でも北のスパイ疑惑事件が起こり、彼の友人たちが次々と逮捕され拷問を受け、ある者は無実なのに死刑を受ける。挙げ句は彼の小学生の息子さえも逮捕、自白を強要され電気による過度の拷問のため歩けなくなってしまう。基本的にはコメディタッチの話なのだが、当初はガンホの一挙一動に爆笑していたのに気がつくと最後は苦い思いでエンディングロールを見上げていた。そして、頭をよぎったのは今の日本、小泉政権のことだった。ここで描かれているのは隣国の過去の歴史だ。だが、小泉政権がこのまま続けば早晩日本もこのような圧政の時代、かつて我が国でもあった戦前、戦中のような一部の権力者による独裁政権、自由にものが言えず愛国心を強要され、あらゆる反体制運動は逮捕、投獄され、拷問を受けて殺される時代に逆戻りするだろう。庶民の間では、密告、讒訴が横行し、うっかり政府を批判するようなことを口をすべらすと、国家の敵、非国民としてすぐに逮捕、投獄されてしまう時代。
この映画を観て改めて思ったことだが、時の権力者というのは、どこの国でも政権維持のためなら、敵をでっちあげ対立をあおり危機的状況を叫ぶ。それによって本当に今一番重要なことから国民の目をそらせることができる。“敵”とは意思や考えが違い自分に従わない者、政権にとって脅威となる者たちだ。容赦なく徹底的に叩きつぶす。彼らは構造改革の抵抗勢力である。日本のためにならない。この国を愛するのならば私に従え! この政治手法が今回の衆院選挙でもまたもやまかり通るならば、やがて小泉改革に従わないもの、意義異論を唱える者は、国家の敵、非国民、国賊とされ何一つ自由に行動することもうっかり口にすることすらできなくなるだろう。
かつてそんな時代があった。何度でも言う。今ならまだ自由に言えるから。小泉首相はファシストである。ヒトラーと同じ狂人である。この男の口車に乗ることは自分で自分の首を絞めることに他ならない。小泉政権の4年間何かいいことがあったのか。小泉改革は最初から最後まで幻である。この痛みの先にあるものは死と破滅しかない。その覚悟がある者は今度も小泉を信じて一票を投ずればよい。僕はもうまっぴらごめんだ。