今ありのままに報告すると
ブログに限らずこのところ常にあちこちでとやかく批判されている増坊であるが、拙ブログに関して一番多いご意見ご批判は、ともかく何でも書きすぎる、冗長すぎる、言葉を弄しすぎるといったもので、表現方法や語句、文体にとってはなるほどと素直に耳も傾ける気になるが、書きすぎるという一点については、なかなか同意できない。
ご指摘の趣旨やご意見の裏にある思いやりの気持ちもよくわかるが、自分にとって書くこととは唄うことと同義であり、未だ思い通りにうたや音楽で自らをうまく表現できない者にとって、ブログはほぼ唯一の手早い手段であり、これでもまだ書き足りないという気持ちさえ実はある。そして書くにあたって心がけることはともかく正直に何でも隠さずにあるがままに書いていこうということで、そのときどきの気持ちやあったこと、したことを嘘偽りなく、もちろんプライバシーの問題はあるので、他者に関してはそこに注意しつつ綴っていこうと考えている。
もちろんありのまま正直に全部書くことが絶対正しいとか、善だとは考えてはいない。というのは、末期癌患者のブログがあったとして、そこには、毎日痛いとか苦しいとかあるがままに綿々と書かれていたなら、それは本当のことだとしても人はまず読まないし読みたくないと思うからだ。自分だってそれは同じで読まないと思う。この例えが適切かはさておき、人は読むからには、楽しい話、面白いこと、興味惹かれることがあるから読みたいわけで、書くという行為は、多少でもそうした読み手の気持ちを意識してどんな辛い切実なことでもどこかにエンターティメント的な要素が必要な、他者の立場に立っての作業だとはわかってはいる。まあ、拙ブログ、ではそれが出来ているか、もしかしたらその癌患者のイテテブログとどう違うかと自問するところもあるが。
さて、実は八十過ぎの母親が今日入院してしまった。息子である増坊の風邪がどうやら伝染ったのか、この数日来7度5分程度の微熱はあったのだが、別に寝込むほどではなかった。ただ、この連休を前に、もっと悪くなったらやばいと、昨日の午前、近くのかかりつけの病院に車で連れて行って診察を受けた。そのときは肺のレントゲンも撮り、特に異常もなく、風邪薬だけ出してもらい元気で帰ってきた。
ところが昨晩になったら熱が上がり始め、38度を超し、ちょっと心配になってきた。一応氷枕をして寝かせて様子を見ることにした。そしたら今朝になっても熱は下がらず、ついに39度を超してしまい、これは家で薬を飲んでいてもおそらく熱は下がらないし危険だと判断し、また車で立川の総合病院に急患扱いで診てもらった。そこで検査しなおした結果、肺炎では幸いなく、ウィルス性の感冒による発熱と脱水症状とわかった。そしてすぐに点滴を打ち、当人は何も食べられないというので、入院させてもらうこととなった。まあ、クーラーのない家で、ベッドでじっとしていても治るあてはなく、看病するこちらがバテてしまうことは目に見えていたからベッドが空いていて幸いだった。
そして夕方、夕食前にもう一度様子見にいったときは、病室で眠っていたが薬が効いたのか熱も7度台に下がり、食欲もやや戻ったようで出された夕食にも箸をつけられるようになった。おそらく元が頑健な人だから熱さえ下がればすぐに退院できると思うが、親父はともかく母の本格的入院は初めてのことで、今回はかなり慌てて動揺もしてしまった。
そしてほっと一安心して、家にはすぐに帰らず約束していた友人と、その後立川で2時間ほど呑んでしまった。実は今日は代々木でバロンなかざわのCDのマスタリング作業があり、昼から自分もそれに立ち会うことになっていたのだが、母がそんな様子で、入院させるまで手がかかり、いったん家に車を戻してから遅れて3時頃スタジオに入った。バロンとエンジニアと今回プロデューサー役を頼んだ親友がうまく進めてくれていて、ほぼ一通り調整は終わっていた。その後、再度確認しなおしマスターとなる盤を焼いて、ついに「完成」となった。
終わって、同方向のその友人は立川までついてきてくれて、増坊が母親を見舞ったときは駅中で待ってくれていたのだった。で、容態も安定したようなので、犬猫と認知症の親父が待つ家に直帰する前に、彼と軽く労いの場を持ったという次第。話も弾み暑かった今日一日の汗の代わりに、冷たいビールは喉にしみいった。
しかし、正直に告白すると母親を入院させて呑む酒の味は複雑なものがあった。親父のことも気にかかっていたし、晩飯も作らないといけない。気にかかることを抱えて呑んでいるとちっとも酔えず、こんな酒は初めてだった。
つまるところ、隅田川フェスを筆頭に諸々の用事で、どうしても家を空ける用件が春先から続いていて、家のこと、親父の世話をはじめ家事の負担一切が老母にかかり過ぎていたのだ。いくら普段は元気に見えてもやはり老体に無理させてしまった。
そのことを悔やみつつも、これからもまだ忙しい日が続くことを思い、さて、どうしたものか・・・と苦い酒を飲み干して店を出、家路を急いだ。体は一つ。思いは沢山。人生の持ち時間も尽きてきている。そろそろ覚悟を決めねばならない。
何をまずするか、しなくてはならないことは何なのか。