地名度と集客力~有名と無名の間
増坊の腰痛だが、ようやく回復傾向にある。まだにぶく痛みはあるし、無理するとまた悪くなりそうな感じもするが、歩くにはほぼ元通りに、さほどかばうことなく普通に歩けるようになった。昔、西荻のソーセージ屋で働いていたときは、クビになってから一ヶ月間も寝たきりになってしまったことを思うと今回はごく軽かった。毎度お騒がせしました。
さて、家のことの報告もあるし、ラ・カーニャ以前のライブの報告も溜まっているが、まずは7月3日の隅田川フォークフェスに向けて思うことなどを今回は書こう。
ときどき思うことだが、売れるということも含めて、有名になるとはどういうことなのだろうか。
「有名」ということは文字を見る限り、名前があることであり、その対極は「無名」である。この場合の有とは、その名前が世に知られていると考えて間違いないだろう。つまり有名とは世間一般たくさんの人にその人の存在が知られているということに他ならない。
岡大介はこのところ新聞をはじめ様々なメディアで取上げられることが多いが、先日NHKラジオの全国ネット番組にゲストとして招かれて、約1時間その番組の中で男女のアナウンサーの質問に答え自らを語り、何曲かその場で歌った。彼と付き合いのある者として、その放送を聴きながらついにNHKに単独で出演かと感慨深くも思ったし、「次は紅白を目指します」と宣言している彼の発言に微笑を禁じえなかったが、直近のライブ情報として5月30日の西荻のみ亭でのライブを詳しく語っていたことにおやっと思った。
案じたのは、そんな風にラジオとはいえ全国ネットで宣伝告知してしまうと、いったいどれぐらいのお客があの狭い店に押し寄せて、果たして入りきれるのか、収拾がつくのだろうかとかなり心配になった。しかしその晩、そのライブに行った友人、仮にK・G特派員としておくが、彼からのメールからだと、その日は宣伝したのでかなり込み合うだろうと増坊が言ったから早めに行ったものの、何のことはなくいつもと変わらず、ぼちぼち客は集まり、しばらくして通常どおりに満席になったとのことで、早く行って損したとのことだった。それを知って正直意外であった。てっきりラジオを聴いたいちげんさんの客がかなり来て少なくとも通常の倍ぐらいの入りになるだろうと思っていたからだ。何故なのだろう。
そのことを考え続けて答えは出ないが、おもったことを書くと、やはり全国ネットだとしてもラジオを聴く人たちは、偶然そのラジオに岡大介が出てそれを聴いたからといってすぐに彼のライブに足を運ばないということだ、つまりラジオのリスナーとライブに通う音楽ファンとはまた別な人種であり、そのときは多少の関心と好奇心を抱いたとしてもそれが直截のアクションへとなかなか結びつかないのかと思った。それは岡君にそれだけの魅力、集客力がないということではなく、おそらく誰であっても似たようなものだと思える。
だいたい月曜の午前10時から1時間、NHKのラジオを聴く層というのはかなり限られるし、まずそれは若者や会社員ではなく、主に高齢者層に違いないし、そうではないとした人たちもやはりライブハウスに足を運ぶことはまずない人たちではないのか。つまりラジオのリスナーとじっさいにライブに来る人とは明らかに乖離があり、彼がその番組の中で宣伝告知したとしてもほとんど集客効果はないということだ。じっさいのところ、たぶん何人かはそのラジオでのみ亭に来た人もいたのかもしれないが、それは自分がそこに行っていないので判断できない。
そして思うのだが、有名と無名との間に、「知る人ぞ知る」という表現があるように、結局のところ岡大介がこのところ売れっ子になって、音楽だけでメシが喰えるようになったとしても、やはり有名の度合いはまだ知る人ゾ知るの域であり、自分が知り関わりのあるフォークシンガーのその大部分が、仲間内、つまりその音楽ファンの間ではビッグネームでも、それ以外の世界では無名でしかないのではないかと思えてきた。吉田拓郎、井上陽水、南こうせつクラスなら世間一般知らないは人はいない。しかし、フォーク界でもようやく死んで高田渡の知名度が上がったように、他の人たちは残念ながらその音楽に関心ある層以外には、今現在は結局知る人ぞ知るクラスではないのか。
今晩のNHKテレビ歌謡コンサートにあさみちゆきが出ていた。昔ちらっと吉祥寺で生で観たような記憶がある彼女を例として出すのは適切かわからないが、まだ彼女だって香西かおりクラスに比べれば、知る人ぞの仲間ではあるが、演歌は好きではない自分でも新聞、雑誌ほかあちこちのメディアで彼女が取上げられているのを見聞きしていたし、前から知っていた。音楽に疎いうちの親たちだって、その歌謡番組によく出る彼女のことを認知していた。つまりそれが「有名」になるということで、残念ながら多少は売れっ子になったとしても岡大介レベルでは、やはり知る人ゾ知る=無名なのだと思い至った。
結局のところ「有名」とはその業界やファン層だけではなく、世間一般の人たち、本来ファンではない層にまで広く認知されることなのである。そうなってこそ初めて集客力がつく。知る人ゾ知るでは、常にまさに知っている人だけ、つまり仲間うちだけしか集まって来ない。
考えてみれば、今は情報は巷に溢れている。人は情報だけではまず動かない。それがよっぽど必要な、求めている情報ならばともかくも偶然小耳に挟んだ情報ぐらいでは出かけたりするアクションは動かさない。ようやくわかった。ライブの入りが悪いのだって、店にチラシを置いた程度の情報では人は集まらないからだ。もしライブにお客を集めたいと願うならばやはり一人ひとりに直接強く働きかけることだ。そこまでやって人は初めて思い腰を上げる。
隅田川フォークフェス、かなり仲間内では有名な人たちも出てくれるし、出演者数も多いので、もしかしたら宣伝なんかしないでも十分お客は来るのではと思わないでもなかったが、今回の岡君ののみ亭の話を聞いて、これは気を緩めてはならないと気がついた。自分では最強の布陣だと思っていても残念なことに世間的にはやはり知る人ぞ知る、なのである。ならば、まずは彼らを知っている人たちに直接強く働きかけて足場を固めなくてはならない。もうあと一ヶ月。このままだと大変なことになる。必死に宣伝して結果としてほど良い数の人がようやく集まるのだと思える。
こんなブログでいくら宣伝したところで、そんな情報だけでは人は来ない。そのことを今改めて心した。ウクレレナイトの轍を踏んではならない。何とか直接あちこちに出向いて人と会い宣伝していかねばけっきょく、またライブは水ものだから・・・という苦い悔いだけが残るに違いない。よしっ、頑張らねば。