ゲバラの伝記映画二部作を観て たかが商業映画と言えどもどうしても観ておきたい、観る義務があると課している映画が自分にはあって、それは昨年でいえば、「実録・連合赤軍」であり、今年はこのゲバラ二部作であった。関心は、映画に描かれた革命と人間、個人の問題であり、連合赤軍もゲバラも昔から深く関心を持ち、これからもたぶん生涯問い続けなくてはならない宿題のようなものだと思っている。だので、公開から遅くなったがどちらも劇場で観れて良かった。
さて、前置きが長くなったが、話題のデルトロ主演、ソダーバーグ監督の「チェ・28歳の革命」と「チェ・39歳別れの手紙」である。この連なるが別個の二作がどのような形態で一般公開されたのかよくわからないのだが、早稲田松竹では幸いのこと、28歳から死の39歳のときまで時間を辿るように観ることができた。もちろん、一作づつ取上げても面白くかなり良くできていて十分楽しめただろうが、この映画は二本通してみないことにはそのゲバラという人物の実像の全容は伝わらないと思う。別個とはいえ、この二作は本来1本の作品として公開される前提で作られたものであり、二本に分けたのは単に時間的に長すぎるという理由だけだと思われる。
巷では、ゲバラを演じたB・デルトロのそっくりさんぶりが話題に上がっていたが、観る前は個人的にはすごく違和感があった。というのは、デルトロという役者はラテン系とはいえやや疲労感あるやさぐれた中年というイメージが強く、ゲバラの持つ陽性の、甘いマスクのチャーミングな色男の印象と相容れないと思っていた。しかし、結論から言えば、この映画ではデルトロ以外にゲバラを演じることは不可能と思えるほど十分にゲバラであり、その疲労感も含めて、晩年のゲバラはおそらくこんな状態でこうして死んでいったのだと心から得心できた。特に「チェ・39歳別れの手紙」での演技は一世一代の名演と言えよう。
自分にとって何より良かったことは、あまり語られることがない、知らなかったボリビアでの無謀なゲリラ活動の結果、彼の自滅的な死を確認できたことであり、革命のシンボル・ゲバラの英雄伝説の実際を克明に描いた部分であった。そして、思ったのは、「実録・連合赤軍」で描かれた「事件」のルーツもまたここにあったということだ。革命的英雄主義なるものはゲバラの死でもって終わっていたはずだったのである。