唯一無比の翁二的音楽世界
増坊のしょうもない思い出話ばかり書いて申し訳ない。肝心要の彼のライブの話をしなくてはならなかった。つい自分のことばかり書いてしまった。すみません。
翁二さんがギターを爪弾き、自作曲を歌っていることは出会ったその頃、彼のアパートでも聴いたし、今もそのフレーズやメロディははっきりと覚えているぐらいだから昔から知っていた。しんみりとした、いかにも彼の描く絵の世界まんまのような綺麗なメロディの曲で、そのときは、あがた森魚が次のアルバムに俺の曲を収録するんだと話してくれた記憶もある。しかしそれから幾星霜過ぎて・・・。
2年前の春一番であったか、会場内のCD売り場で、オフノートが出した彼のCDアルバムに出会ったときは正直驚いた。心に残る「師匠」であるから忘れたことはなかったが、まさかアルバムを出しているミュージシャンとしてそこ大阪でその名に再会するとは思いもよらなんだ。不肖の弟子としてまったく申し訳ないが、最近まで彼のことは何をしているのかその消息も含めてまったく知らなかったのだ。まあ、繰り返しの言い訳になるが、2005年に高田渡が急逝するまで、日本のフォークソングの状況にもサブカル系コミック事情からもそれこそ何十年も遠ざかっていたのだから。
早速そのCDを買い求めて聴いた。そこには、あのアパートで歌ってくれた音楽世界がそっくりそのまま敷衍され深みを増してしっかり記録されていた。驚きと感動でじっと耳を傾けた。そしてしだいにわかったことは彼は今北海道に住み、画家として活動の傍ら自ら歌う音楽活動も続けているということだった。そして今回、のみ亭で彼のライブの告知を記した張り紙を目にして、この機会を逃すと次はあるかわからないと考えて無理を通して覚悟の上で行くことにしたのである。
正直なところ不安も大きかった。かつての憧れの人は変わっていないだろうか。こちらを覚えていないことは当然としても果たして再会すべきだろうか。思い出は思い出として手付かずにしておくべきではないのかと迷うところもあった。また、果たして彼一人でミュージシャンとしてちゃんと演奏出来るのだろうかと失礼にも心配した。しかしそれはすべて杞憂に過ぎなかった。予想をはるかに越えた素晴らしく深い独自の世界がそこにあったのだ。《ライブの模様はさらにもう一回》
★彼自身が描くアルバムジャケットを観ればおわかりのように、その音楽世界をすべて現していよう。実際に彼の唄う歌はこの風景そのままなのだ。