古家の主ヤモリ
増坊が今住んでいる拙宅、つまり壊すべき古家は築50年近く経つ昔ながらの木造建築だからやたらヤモリが沢山居ついている。ヤモリといっても今の都会の最新マンションに住む人たちは見たこともないかもしれない。今回はその話。
我が家のバカ猫は今頃の季節になると、毎年トカゲ(カナヘビとも言う)とヤモリをどこからかとってきてはじゃらして遊んで殺してしまう。むやみな殺生はするなときつく言い含めても、猫のことだからみつけると本能的に捕まえて、動くのが面白いらしく、じゃらして遊んでは結局食べることなく動かなくなると飽きてしまう。
年寄り猫は世知に長けているせいか、あまりそんなことはしないが、若猫である足袋次郎、つまり手足が白い足袋猫は、トカゲたちがもの珍しいらしく、このところ一日にほぼ一匹づつトカゲかヤモリを捕まえてきては室内でじゃらして遊んでいる。
トカゲは我家の前を走るJR八高線の線路内の草むらにいるのを捕まえてくるのはわかっているが、ヤモリはいったいどこにいるのか、普段から肉眼ではなかなかみつからない。ヤモリと言うのは、古い家の中の戸板の陰や納戸の中に棲み、小さな昆虫を食べて生きているカメレオンのような爬虫類である。色はグレイでパッとしないが、もしかしたら環境に合わせて変えられるのかもしれない。トカゲもヤモリもほぼ同じ大きさで、動きは圧倒的にトカゲの方が素早いのは言うまでもない。そんなおっとりしたヤモリはとても可愛く、開いた小さな手といい、恐竜を思わせるワニのような顔といい、ポケモンに出てくるキャラの一つにそっくりで、もし時間ができたら一度は籠に入れて飼育してみたいと考えるほど可愛く思っている。さわるとひんやりとして気持ちよく、噛まれるとちょっと痛い。赤い目といいとても愛嬌がある。だのにバカ猫はそれを咥えてきては手で転がしては離し、また捕まえては離してと弄繰り回して結局は弱らして殺してしまうのだ。
だので、猫が何かガサゴソやってるなあと気がつくとたいがい犠牲者がそこに存在しているのですぐに猫から取上げて救出しては外に出してやる。しかし、毎日のことなのでいいかげんこっちも呆れて、「またお前か! 捕まるほうも捕まるほうだ。いい加減にしろ!」とつい言いたくなる。といっても毎回同じヤモリが掴まっているわけではなく、それだけこの古家の周囲には何十匹もいると思われる。
沖縄に詳しい友人の話ではヤモリも沖縄のはもっと大きく夜トイレへ行くと網戸に灯りを求めて何匹も群がっていて、しかもそれはケケケケケと鳴くのだと言う。カンボジアに行った人も同じようなことを言っていた。残念ながら日本の、この多摩地区にいる種は鳴きもしないし、動きもカエル程度しか動かず、すこぶる面白みがない。食べてもうまくないのか、猫も食べないが格好のおもちゃである。しかし、ヤモリ、つまり家守というぐらいだからきっと良い動物なのだろう。今は新建材での機密性の高い家が多く、きっとヤモリにとっても生きにくい時代だと思われる。できればこの生態系を残して家が改築できたらば理想なのだが。
★携帯のカメラで撮ったら近すぎてピントが合わなかった。上が頭で、背中に突起みたいなのもあるし、小さいけれどコモド島のトカゲみたいでしょう!?