思わぬ掘り出し物「ウェイトレス~おいしい人生のつくりかた」
今朝は、まだ暗いうち4時頃、猫に起こされてしまった。昨晩、部屋に入ってきた足袋次郎を布団に入れたのが間違いで、朝方、トイレに行きたくなったのか騒いでこちらも起こされて、それっきり眠れず、仕方なく片付けの続きをしたり犬と早朝の町を散歩したりした。動物の都合に人間が合わすとこういう羽目になるので反省した。
今日は、Oさんの本葬、告別式が午前にあり、母親だけがまた今日も行くのだが、クルマで昨日の式場まで送っていくとそれだけで往復で一時間以上とられてしまう。そこで、やはり参列する人の家まで母を送って、その人の車で乗せていってもらうことに。ついでに発送する受注本を一冊梱包して、ヤマトのセンターから朝から送った。
そうこうしているうちに、都心に出る時間となる。今日は、ギンレイのプログラムの最終日。失くした会員カードも再発行してもらったので、何としても行かねばならない。
春4月頭で、電車の中も街もやたら若い人たちでいっぱいで混んでいて閉口した。いわゆる大学生たちなどの新入生や新卒社員のフレッツシャーズたちに加えて、春休みも終わりなので、子供連れの親子も多く、さらに何故か大きな荷物を抱えた人も多い。
さくら水産で昼飯かきこんで、ギンレイホールの映画は、ウディ・アレンの話題作「タロットカード殺人事件」とエイドリアン・シェリーという知らない女性監督の「ウェイトレス おいしい人生のつくりかた」。
ウディ・アレンの方が本命で、期待して行ったのだが、前作の「マッチポイント」は久々にシリアスな傑作だったのに、このところの彼の映画の例にもれず、コメディはつまらなく、しかも彼自身が出ていると悲惨な出来というパターン通りで、前作に引き続き、ロンドンを舞台に再度スカーレット・ヨハンセン主演で、恋愛サスペンスコメディを狙ったつもりが、筋も粗く大いに期待はずれだった。
スカーレット自体は、「ゴースト・ワールド」以来ずっと観続けている好きな女優であり、今回のも等身大の彼女の地に近く、決して悪くないのだが、ウディ・アレンがフガフガどもりながら出てくるとその発するギャグが感心するぐらい笑えず、自ら映画のテンポをぶち壊してしまう。
やはり歳も歳なのだから、監督だけに専念したほうが彼の才覚は発揮できると改めて思った。彼ほどのキャリアある巨匠だからこんな出来でも許されるのであり、他の監督ならば愚作としてお蔵入りとなっても仕方ない駄作であった。笑えるのはラストのおまけ的シーンであり、それも失笑としか言いようないのが情けない。
だが、期待しないで観た「ウェイトレス」は、ほとんど知らないTVの俳優たちによるインディペンデントな映画なのだが、夫のDVに悩み、離婚を考えながら望まぬ妊娠をしてしまった少し年増のウェイトレスの生態と内面、それに彼女をとりまく同僚たちの人生が実に巧く描かれており、このところ流行の料理をテーマにしたおしゃれな女性映画だと考えていたら嬉しい期待はずれの小品ながら心温まる傑作であった。
ただ、後で帰ってからサイトで知ったのだが、この映画の脚本・監督であり、俳優として自らも同僚のウェイトレスとして重要な役どころを担っていたシェリー監督は、この映画完成後、40歳の若さで亡くなっているとのことで、それが事実だとするならば、あまりに惜しい才能だと驚きかつ嘆息した。
いずれによ、良く出来た映画というのは、ささいな脇役の一人ひとりまでが実に細かく描けているからだというその見本のような佳作であった。パイ好きの女性に限らず、男性も必見の一作である。