結局、時給60円に。あほらし!
《前回の続き》
それから気合を入れて、早く終わらせようと消しゴムかけに真剣に取り組んだ。結局、3時間近くかかってようやく全部消し終えた。ああしんど、汗かいた。右腕はパンパンに張っている。細かく再度確認したり、ページの間に詰まった消しゴムのカスを取ったりしてさらに時間かかったから、トータルで3時間だとすると、この作業で得た儲けは時給60円! 消しながら我が身の愚かさを呪い、いろいろなことを考えた。
世の中には、本を読むときに、ペンや鉛筆を片手に、読みながら大事な語句や箇所、気になった部分などにアンダーラインや傍線、丸囲みなど本に書き込む人がいる。それはその人の読み方であり、その人の本である限りとやかく言うことは何もない。ただ、本に書き込む人と書き込みしない人はほぼ完全に別れており、書き込み系の人はほとんど常にそれを行うし、増坊もそうだが、しない人はまず絶対しない。
書き込みする人の中には、読みながら、目で追うのと同時にずっと線を引き続けている人がいる。要するに、線を引かないと読んだことにならないらしい。そんな人の本は最初から売り物にならない。今回の本は、そこまでひどくはないが、ほぼまんべんなく、書き込むタイプで、消してみてわかったが、一行でも書き込みがないページがあるとそれが目立つぐらいだったから、7割どころか、9割近く何かしら線引き、囲みなど書かれていた。
どうしてそんな本を売ろうと考えたのか、自分でも訝しく思うが、この人、2Bぐらいの柔らかい鉛筆でかなり太く、それも力をいれずに引いていた。だから消してみると消しやすく、ほとんど跡が残らない。それでもって、これなら消せば十分売れると欲出して、暇なとき消せばいいやと出品してしまったらしい。
おそらく当初はかなり高い値で出していたはずだ。それが再出品を何度となく繰り返しているうちに全体的相場が下がり、合わせてこちらもついついどんどん下げて、気がついたらほとんど儲けが出ない下限ぎりぎりの価格になっていた。それでこんなに手間かかる本なのに、290円ならばようやく売れてしまい、忙しい最中、こうしてかなりの労力と時間を費やし大いに苦労したのである。
まったくバカと言うか愚の骨頂だ。 もう二度とこんな本は売らない。ちなみに出品時最初に自ら書き込んだコメントを読むとすっかり忘れていたが、「文中に鉛筆で線引きがありました。消せるところは頑張って消しておきます。本の状態は良好です」とあり、まさにがんばって消したわけだ。