首相の職を賭してまでアメリカに忠誠を誓う、「テロとの戦い」の胡散臭さ
今日は9月11日である。
あの米国を襲った同時多発テロから早や6年目となる。9/11.は、日本人にとっても8月15日と、8/6.や8/9.と同じく大きな意味ある深く顧みる大切な一日だと思える。なぜなら、今日の世界の安定と平和にとって、一つの大きな転機となった問題の日だからだ。あの日を境に世界はそれまでとどのように姿を変えてしまったか、そして今本当に人類がなすべきことは何か考えてみたい。
さて、安倍首相はこの臨時国会で、テロ特措法が延長できなかった場合、総辞職も辞さないと自らの進退を賭けてその決意を述べたが、その職を辞す覚悟をしてまでアメリカに忠誠を誓うとは全く理解できない。
先の参院選であれだけ大敗したのにも退陣せず政権の座に強く執着してきた人が、突然一法案の成立だけに職を賭すとはいったいこの人の頭の中はどうなっているのだろうか。それほどブッシュに恫喝でもされたのであろうか。
そして、この法案を巡ってこのところまた「テロとの戦い」「国際協調」などという言質が喧しくなってきている。だが、果たしてそもそもアメリカが始めた対アフガン、対イラクの戦争はテロとの正義の戦いであったのか、それによってその地も含めて世界中からテロはなくなったのだろうか。
ご存知のように、21世紀になって幕開けの年の今日、晩の10時ごろだったと思うが、テレビをつけたらあの貿易センタービルが炎上していて、さらにもう一機飛行機が新たに激突する驚くべき映像が眼に飛び込んできた。
それはまさしく非道なテロであり、現地の日本人も含めて数多くの無辜の人命が一瞬にして奪われた。そして、新米大統領のブッシュはテロリストたちへ報復を誓い、まず首謀者とされるビン・ラディンと関係があり、彼を匿っているとされるアルカイダと繋がりのあるアフガニスタンを攻撃し、時のタリバン政権を転覆させた。そして、次にやはりアルカイダと関係があり、大量破壊兵器を隠し持っているとして、イラクへ侵略戦争を始めた。
だが、ビン・ラディンは未だ捕まらないし、アフガンの治安は未だ回復せず、イラクの大量破壊兵器なるものは結局存在しないことが明白となった現在、米英のアフガニスタン、イラク侵攻は道理も根拠もない他国への一方的「侵略」であり、国際法上も大きく問題視されているのは当然であろう。結局、ブッシュの言う「テロとの戦い」は、権力者サダム一族を殺害し、親米政権を打ち立てただけで、イラクの地は自爆テロが日常的に多発する危険極まりない紛争と宗派間の抗争の地となってしまったことはどのようにしても正当化も言い逃れもできない事実だ。アフガニスタンも同様であろう。
日本は開戦当初からいち早く全面的に米国を支持し、今日においてもその「支持」は見直す機運すらないようで、またぞろ今回のテロ特措法をめぐって、これは国際公約であり、テロとの戦いを支援するためだなどと相変わらず首相たちは説明している。しかし、本当にその米国の起こした戦争を後方支援することがイラクやアフガニスタンの真の平和回復に繋がるのか今こそ再検討すべきではないだろうか。
ちなみに、昨日NHKが報じたところでは、NHKと西側テレビ局が共同でイラク国民に実施した世論調査によると、1年前に比べて治安が悪くなったとする人が42%でダントツであり、アメリカ軍の駐留に反対する人が79%にも上っている。米軍撤退は今すぐにと望む人は47%であった。駐留を支持するは21%で、そもそも「侵略は間違いだった」と答える人は63%にも上るのだからイラク国民自身がこの「テロとの戦い」に憤り、外国軍の撤退を強く望んでいるのが現実なのである。
また、イラクでの民間人死者数は昨年11月にイラク保健省が発表した推定でも既に10万人~15万人とされている。米軍の死者数も現在3700人を超えこのままでは早晩4000人の大台にのるのも近いと予測されている。
テロリストやテロ支援国家は断固として許してはならないのはもちろんのことだが、このイラクの現状を見るだけでも武器や武力、まして戦争という手段では、テロ根絶はおろか、永久にテロとの戦いは終わらないことは明白ではないか。
戦争には勝者はいない。あるのは、多くの無辜の民間人の死と下級兵士の死である。彼らもまた9/11.の後からの犠牲者なのである。これ以上無意味な戦闘による死傷者や難民を増やさないためにもテロ特措法の新法にせよ、アメリカが勝手に始めた戦争を後方支援する法案には断固反対せねばならない。