久々に都心に出て
今日は梅雨の曇り空の下、久々に飯田橋に出て、毎度のことだが、二週に一度の名画座通いの日とした。
映画は、好漢ジョシュ・ハートネット出演の自閉症同士の恋人たちの姿を描いた「モーツァルトとクジラ」と、もう1本は、ポール・バーホーベン監督の話題作「ブラックブック」。バーホーベンの方には実は全然期待してなかったのだが、この監督のイメージが覆された圧巻の戦争サスペンス大作だった。
粗筋は、ギンレイのプログラムを纏めた小冊子からそのまま載せると、「何者かの裏切りで家族をナチスに殺害されたユダヤ人歌手ラヘルは復讐のため、ドイツ将校に接近するが……。レジスタンスの光と影を生きた女性の半生を、23年ぶりに母国オランダで制作したバーボーベン監督の壮大なサスペンス・エンタテイメント!! 」とあるように、第二次大戦末のオランダを舞台に、レジスタンスと共に復讐のため、スパイとしてナチス司令部に潜入した女性の戦中戦後の数奇な運命を描いた、実話に基づいたストーリーだそうだ。
スパイのため接近した大尉を愛してしまったり、組織内部に裏切り者がいたりと、お決まりのかなりベタな展開なのに、少しも飽きさせず、二時間半の長丁場一気に見せてしまう。こうした戦争ものは、事実と虚構をどう織り交ぜて、単なる実録物ではなく、映画としても面白いエンターテイメントに仕上げられるかが、監督の腕の見せ所だろうが、その匙加減が抜群で、バーホーベン遅まきながらその実力を見直した。ようやく気がついた。バーホーベンとは、オランダ人のブライアン・デ・パルマだったのである。
有名な俳優はほとんど出ていないが、戦争とは何か、そして戦禍によって狂わされていく人間そのものの本質をも描いた超娯楽大作である。特にラストが秀逸で監督の真意がどこにあるか見逃してはならない。一見の価値はある映画だと思える。