有山はもっともっと評価されるべき!
今の人、それも東京の人に有山じゅんじといってもよほどの音楽通でないかぎり、知る人は少ないだろう。
もともとは、あの
五つの赤い風船に高校生のとき在籍していたというのだから、そのキャリアは半端じゃない。しかし、増坊が彼のことを知るようになったのは、上田正樹と一緒にクレジットされた、70年代半ばの名盤「ぼちぼちいこか」で、高校生のとき、レコードで知り、大きな衝撃を受けた。一言でいうと、こんな音楽が日本にもあったのかという驚きだった。
全曲日本語で、といってもベタな関西弁で、コミカルに、かつ人生の哀歓と真実を有山のラグタイムギターに乗せたこのアルバムは、上田正樹のかすれた哀愁を帯びた歌声と、掛け合いの有山のペナペナの甲高い歌声も絶妙のマッチングで、日本語でもこんなことが歌にできるのかとまさしく衝撃的だった。同時にこんなギターの弾きかたもあるのかと有山淳司という名は記憶に深く刻まれた。
それが日本でも数少ないラグタイムギターであり、有山こそがその第一人者であることはやがて知ったのだが、いくらコピーしようにも難しくしかも他に類がなく、音楽的には憂歌団などに近いのだが、有山のはブルース度がもっと軽やかで、簡単そうに見えてスゴく奥深い。長い間ずっと追い求めても手が届かない憧れの人だった。
福岡風太たちに言わせるとそんな有山は、浪速の天然記念物なのだそうだが、自分にとっては失礼だが、絶滅危惧種の希少動物のように思える。ともかく、あんなギターが弾けて、あんなトンパチなヘンな人はいない。今年の春一では、昨年よりは彼のギターを堪能できた方だが、途中で、ハー疲れた、しんどいとか溜息ついて、あげくに早く終わらしてビールが呑みたい、ギターが邪魔やけどと言い出し、客からおいおいと窘められていた。
まあ、それこそがラグタイムなんだろう。
♪柔らかな時間の中、ずっと心はラグタイム、言葉の響きほんと好きだな。心の中、いつもラグタイム。