詐欺とペテンの日本の政治社会
増坊はかつては、筋金入りのプロレスファンだった。十代の頃から、駅売りで「週刊ファイト」はかかさず買い続け、プロレス界の一挙一動をそれこそ、力道山の頃からTBSプロレス、新日、全日と追い続けてきた。二十代、三十代はプロレスに明け暮れたといっても過言ではない。だが、今では、ほとんど関心はない。大晦日に曙が失態を繰り返すのをおせち料理を作りながら横目に観る程度で、格闘技いっさい、もうどうでも良くなってしまった。
理由は一つ、新日のレフリーであったミスター高橋の著書を読んでしまったからだ。その「暴露本」の中では、猪木とシンの抗争をはじめとしてすべてがヤラセで、あらかじめ仕組まれていたことが明かされ、力道山の頃から噂され続けていたプロレス八百長説を白日の下に証言していた。
元より、プロレスなんて、飛んだり跳ねたりのサーカスのようなものなのだが、その勝ち負けも含めて、すべてが筋書きのあるショーだとするならば、あれだけ真剣に必死な思いで手に汗握りつつ見続けた自分の青春時代は何だったのかという気持ちになる。まさに騙され続けてきたのである。
また、前書きが長くなったが、今回の自民党、昨年の衆院選で郵政民営化に反対し、造反議員となった人たちの復党問題、まるでプロレスと同じだな、と思った。すべてが小泉劇場の枠の中でとても良くできたショーに過ぎなかったのだ。
改革を旗印に、郵政民営化なくして、日本の前進はない!とバカの一つ覚えとして叫ぶ小泉首相の前に立ちはだかる抵抗勢力という悪役。国民の目は、ワイドショーで連日報道される、改革派と守旧派の抗争だけに釘付けにされ、他の争点はいっさい話題にならなかった。
元より「郵政問題」は国政選挙における最大の争点などではなかった。争点の一つかもしれないが、外交や経済、教育などいくらでも重要問題は山積みだったのだ。ところが、先の選挙で投票に行った者の多くが、郵政民営化の是非だけで自民党を選んでしまった。そして、結果、自民党は歴史的大勝し、今、教育基本法を改悪しようとし、さらに安倍政権任期中に憲法さえも改定を視野に入れている。
今回の復党騒ぎだって、来年の参院選挙を見据えてのことでしかないし、あれだけ騒いだ敵か味方の刺客騒動も何のことはない全ては元の鞘に収まってしまう。全く良くできた茶番で、プロレスと同じで抗争を作っては観客を呼び込み、話題性を高めてヒーローが勝つための出来レースだったのである。
哀れなのは、かつての増坊と同じで、だまされているのに、小泉「改革」なるものを心から信じて、自民党に一票を投じた純真かつイノセントな国民ではないか。改めて思う。世はいかさま、この世は詐欺なのだ。
先の選挙での亀井静香先生の謂いではないが、「国民のみなさん、いい加減に目を覚ましてくださいよ!」である。