古本屋に未来はあるか
当日の講演の中で話に出たことだが、考えてみると、確かに10年前はネット古書店などという言葉自体さえなかった。ところが、今日では、実際の店舗を構える従来型の古本屋でさえ、自店売りと平行して楽天やアマゾンなどのネット市場での販売も含めてインターネットを利用しているところがほとんどだろう。昔ながらの町にあった古本屋が減る一方なのに対して、個人が始める店舗を持たないネット古書店の数は増える一方だ。今回の講座を企画した組合としても、こうした変わり行く現状に対して危機感を抱き、古本屋のなり方の説明以前にもっと古書組合への加入を呼びかける色合いが強かったように感じられた。
確かに、古本屋は今日の場合、ネットなどで誰もが気軽に始められる。しかし、より真剣に取り組めば取り組むほど、つまり売れれば売れるほど今度は仕入れの問題が浮上してくる。個人でセドリなどで仕入れているだけでは早晩限界が見えてくる。そこで、本格的に仕入れのために組合に入る人が多いとのことだった。だから講師や司会者の口からも組合に入ることの利点が多く語られたし、確かに本気で古本屋に取り組もうと考える者にとって組合とその市場は大変魅力的に思えた。
翻って自分も、ならばゆくゆくはぜひ組合に入れてもらって、末端から末席程度へのステージアップをはかりたいとも思うが、今はまだ仕入れに困るどころか、本の処分に困っているわけで、もちろん市場でそうした本を売ればよいということも今回得た知識だが、そのために組合に入るのは何か“本末転倒”のような気がするし、それはまた、当然もっと真剣にこの商売に取り組むことに他ならないわけで、現状では、家の改築や老親の問題など片づかない問題が目の前に山積みなので、まだとても時間がない。だから将来の夢の一つとして温めていくことにした。
とにもかくにも今回、伝説的な古本屋の店主――その著書や目録では懇意にし、敬愛しずっと憧れてきた――方々を間近に接して、中でも月の輪さんには挨拶も出来たし、いつかは彼らのお仲間になる目標もできたので、望外の収穫を得た一日だった。帰り道は、ウチの近所に住むネット古書店仲間で、昨年のこの講座のあと、組合に加入したNさんと商売について語らいながら途中まで帰ってきた。
古本屋に未来はあるか。今回の講座に参加した120人満席の会場を埋めた人々を見る限り未来はあるようだ。だがそれは、従来型の古本屋ではない。自分も含めて素人が誰でも気軽に古本屋を始められる時代だからこそ、プロとは何か古本屋のあり方とは何か今こそ問われていると気がついた。