「家系図」から世の中の仕組みが見えてくる
いささか間が空いたり、パソコン?の不具合で話も繋がらなくなっているが、このところ一冊の本『閨閥~日本のニュー・エスタブリッシュメント/佐藤朝泰著・立風書房刊』を元に、日本の政治、ひいては社会の仕組みについて考えている。
この本には、今日の日本に君臨する、多くの財界、産業界、政界、それに皇室と繋がる新華族の名門一族の係累が家系図としてほぼ収録されている。その一門はどのような人材を輩出し、男子はどこの家から妻を娶り、女子はどこに嫁ぎ新たな人脈、姻戚関係を結び繋がっていくのか、事細かに追い説明を加えている。丹念かつ綿密な調査に基づいた労作である。
本書を通して見えてくることは日本社会はこうしたいくつかの名門一族の結びつきにより、政治も経済も行政さえも支配され、彼らの意のままに牛耳られているということだ。その例として、実際の系図を載せられれば良いのだが、本の中ならともかく、中には一私人としてのプライバシーもあるので固有の家名は出せないものの、ある一族の場合、首相級の政治家、大企業の社長・会長、さらに外交官、大使、大蔵省の高級官僚の名があまねく連なっていて驚かされる。首相経験者の祖父を中心に、その息子も国会議員、兄弟には裁判官、高級官僚、女子は大企業の社長となる者に嫁ぐ、などという例がいくつも見受けられる。庶民の感覚からすると、彼らは極めて恵まれたまさに“華麗なる一族”なのだが、我々一般大衆は彼らに憧れたとしても、シンパシーを抱いてはならない。なぜなら、彼らは彼らの権益、権力維持のために政治、行政を担っているのである。
俗に昔からこの国では、政・財・官の癒着が問題とされてきた。談合しかり、天下りしかり、官僚の政治家転出しかり。自民党などの場合、大企業からの政治献金を受け、活動資金として、財界の意を受けて、企業には減税や公的助成、庶民には増税、痛みと自己責任を押しつけるという悪政を多年にわたり行ってきた。これは、まさに財界、大企業のための政治である。
結果として、富裕層、富める者はますます富み、リストラとコストカットにより企業は空前の儲けを出し、国民の多くは、リストラによる失業者、サービス残業、正社員になれないパート労働者の増加、働いても収入が増えないワーキングプアという新たな貧困層が多く生まれている。昨日の新聞によると生活保護を受けている層が百万人を超えたという。
政治がいつまでも変わらず世の中はいっこうに良くならない。さらに悪くなっていく原因は、日本社会を牛耳るこのようなニュー・エスタブリッシュメント、つまり新支配者層が存在するからなのだ。この本を通して家系図からそれが見えてきた。何だ、みんな繋がっているじゃないか、政治家も官僚も大企業の社長達もみんな一族、親戚、姻戚関係にある係累なのだ。増坊に言わせれば、政・財・官は、癒着しているどころか三位一体、同じ穴のムジナなのである。これでは、政治は、日本は絶対に変わるはずがない。