本好きと本読みのあいだ
当然のことながら、本好きと読書好きは似ているようだがそもそも違う人種だ。本好き――愛書家、蔵書家というのは、本という媒体そのものが好きなのであって、もちろん読むためのものであるが、それを手に入れ私物化、所有したい欲が強い人のことだと思える。そしてえてして、そういうタイプの方は実際は本を読んでいないことも多い。入手した段階で満足してしまい読まずに積ん読となってしまうのは、誰もが覚えがあるだろう。
それに対して読書好き、読書家というのはともかく本、活字を読むことが好きなわけで、買うことはもちろん、図書館などで、借りて読めるのでも良いわけで、存外所有欲などはなく、読んでは処分してと数をこなしていく。
本の愛好家というのは、大別するとこの二種類に分けられ、心の内には両者が住み着いているのだがたいがい人はどちらかの傾向に偏っているように思える。自分の場合、自ら読むのなら、本なんか読めさえすればどんな状態であろうとも一切かまわないと思いつつ、職掌がらのせいか、本の状態に関しては極めて神経質、気になってしまうわけで、非常に分裂したアンビバレントな心情がある。
私的感慨だが、アマゾンなどで本を購入する人の多くは、読書好き、というよりもまず読めればよいという実質派が多く、自店舗などネット古書店の方へ自ら訪れて来る人は、愛書家、本好きが多いように思える。まあ、当たり前といえば当たり前かもしれないが。