ながら読書のできる人
このところ酒について考えたり書いたりすることが多い。
思うのだが、酒とは、ダウナーな麻薬の一種だから、それを飲みつつ、思考したり、生産活動的なことは向かないのではないか。モノを書くことしかり、本を読むことしかり、飲んでるときはまっとうなつもりでいても後で素面で読み直したりしてみると、支離滅裂で、まるで役立たないことに気がつく。読書というのは、マンガや映画などと比べて、視覚から直截頭に入るメディアではなく、文字という記号を脳内でイメージに構成し直さないとならない。かなり脳力を使うしんどい作業なのだ。お茶やコーヒーなどのカフェインを含むソフトドリンクならば、覚醒作用もあろうが、アルコール類は逆に思考力を低下させ麻痺させていく。
世の中には、勉強にせよ、どのような仕事にせよ、音楽をかけつつ、ラジオなど聴きながら、自らの作業ができる人がいる。ある漫画家など、テレビをつけっぱなしで、時おり画面を見つつ仕事している人もいるそうだが、増坊にはとても真似できない。そもそも一つのことすらなかなか集中できない不器用な人間に、気が散るような別な平行作業ができるはずがない。特に頭を使うこと、書いたり読んだりするときは、酒どころか一切の音楽さえも雑音もあってはならない。外が明るいと、もう一つ集中できないから深夜が一番何事もはかどる。ゆえにこのブログも夜遅く書くことになるのだが、それはともかく、本を読みながら酒を呑む。やってみたいし、憧れるが、自分にはできないことなのだ。
どの作家でもいいのだが、増坊お気に入りの、例えば矢作俊彦の乾いたハードボイルドのページを繰りながら、ウイスキーを生でグラスを傾ける。自分も主人公になったようでカッコイイが、おそらく、本に夢中になると酒は止まり、酒が進むと頭はボーとなりストーリーが追えなくなるはずだ。実は一昨日試しにやってみたが、疲れがたまっていたせいか、数ページ読んでダウンしてしまった。ゆえに、酒場でも黙々と呑みながら本が読める御仁が心から羨ましい。