もっと食えない音楽の世界・1
どんなことでも続けていくとコツや秘訣が少しは見えてくる。商売の法則といってもいい。ささやかながらもネット古本屋を3年間続けて、いくばくかの金を得てわかってきたこともある。前回、儲かっていないのに商売は軌道に乗ってきたようなことを書いたが、それは要するに、そうした“法則”が見えてきて、これこれこうすれば商売としてやっていけるというノウハウがわかったような気がしたからだ。
それは、ごく当たり前のことなのだが、もしネットで古本を売って商売として成り立たせようと考えるならば、ともかくまず数が勝負だということだ。自店舗売りの街の古本屋だって同じことかもしれないが、ネットの場合、まして、今、出品している本の数に比例して注文が入ってくる。もちろん、本の質、売れる価値のある良い本を揃えられるかということも同じく大事だが、それよりもまず数ありきなのだ。
例えば、自分の場合、一例として、アマゾンのマーケットプレイスに500冊の実用書類を出品したとする。月によって売り上げもばらつきがあるが、だいたい月3万~5万の売り上げがある。※現在のところアマゾンに出している分はまだ千冊に届いていないと思う。ということは、単純に考えれば、倍の千冊の本を出せば、その倍の額が入ってくる。この計算で、仮に月に30万稼ぎたいと思うならば、月に三千冊~五千冊の本を出せばよい。もちろん売れたらその分随時補充しなくてはならないし、売値が1円のような格安本は除外してのことだ。最低価格が1円からの本を何冊出したとして、それが売れたとしても儲けなど出ない。だからある程度の値が付く本を出品した場合の話だ。そしてプロの大手古書店では、常時何千点どころか、おそらく万の数の本をサイトに出品している。それである程度固定的売り上げが得られるというわけだ。これはアマゾンに限らず自店のサイトでも同じことだと確信した。どんな本が売れるか、客のニーズというのは今もってよくわからないというのが正直なところだから、ともかくまずサイトに並べてみないことには始まらない。幸いウチにはまだまだアップしていない本が天井高くまで部屋一杯、まさに汗牛充棟の状態である。だから、これをどんどんサイトに出していけば、それに応じて収入はかなり増えるだろうと甘い夢見ている。
しかし、それがなかなか出来ない。関西から帰ってきて、未だアマゾンだって再開していないわけは、アマゾンを始めると、またネット古本屋の“日常”も再開となって、本が売れるのは嬉しくとも、本の梱包・発送は当然のこと、ネット上の出品、再出品の手続きの雑事に毎日追われ、そうしたメール処理だけで1日のかなりの時間が終わってしまうからだ。今やすっかり音楽漬けとなり自由を満喫してしまった自分の体は、そうした以前の生活に戻ることに抵抗しているようなのだ。では、それではどうやって金を稼ぐつもりかと自分で自分に問いかけつつ毎日気がつくとぼんやりギターを弾いている。いったいこれからどうするつもりなんだ、お前は。気分だけは古本屋の端くれからもはやミュージシャンの端くれなのである。
★京都の路地裏のキジ猫。京都は猫も懐っこい。