続・今後のことなど
と、忙しいのに、今日は、午前中本の発送郵便局で済ませてから、飯田橋のギンレイへ今週の映画見に行ってきた。何年もここの会員となっているので、ともかく1本でも多く観た方が得だと貧乏性ゆえに、二週ごと変わる上映スケジュールに合わせて、今日が最終日なので慌てて行ったのだ。
映画は、オーストラリアの鉱山の町が舞台の『ボビーとディンガン』と、お目当ての『ブラザーズ・グリム』。これは、天才テリー・ギリアムの、久々7年ぶりの新作で、増坊は、もちろん『モンティ・パイソン』の頃からの大大ファンだから、どうしても見逃すわけにはいかなかった。しかし、感想は…このところのギリアムが撮ったハリウッドでの気の抜けた何本かに比べれば、ギリアム復活!と感じさせるところもあるのだが、正直に言うと、もう一つの出来だった。
まず、『ボビー&ディンガン』について。この映画は原作本があり、日本では、今増坊が一番気に入っている画家、酒井駒子さん描く素晴らしい表紙の同名の翻訳本が出ている(実はウチでも売っていたが売れていない)。しかし、原作本は、あまり面白くなく、こんなつまらない単純な話をどう映画化するのかと、そこに興味があった。だが、映像とは素晴らしいもので、小説よりも数段良く新たな解釈やヒネリも加えられていて、子役のうまさもあってホロリとさせられた。古本屋が言ってはおしまいだが、翻訳も含め出来の悪い小説よりも映像の方がまま質が高いことがある。この映画掌編だが、めっけものだった。ただ、このオパール掘りの親子、早晩塵肺で早死にするであろう。労災補償は受けられるのだろうか気になった。
問題の『グリム兄弟』だが、何かもう一つギリアムらしさが完全に発揮されていない。思うに映画とは、ウソを、それも大ボラを吹いて、それをどこまで本気にさせられるかだと思うのだが、かつてのギリアムには、『バロン』を頂点として、呆れかえるほどのバカバカしさがあった。まさに驚嘆させられ映画のウソを堪能させられた。。これこそ映画だと思った。映像の魔術師と呼ばれる人は、他にも多くいるが、ギリアム流の大ボラ、バカバカしさが今回は足りなく、かつての作品に必ずあった、客をあっと言わせるひねりもなく、予定調和に終始して特有の毒気も感じられない。
役者も過不足ない。舞台設定も彼が好む中世っぽい田舎の村と暗い森だ。それに特撮技術も思う存分にやれる。ましてグリム童話、とくればサイコーのお馬鹿映画が撮れるはずではないか。実際、好きな場面もたくさんあるし、今晩は夢に見そうな彼しか撮れない映像も多い。だけど、何か物足りない。ギリアムと今やライバル?ティム・バートンの類似性と違い、特に『スリーピー・ホロウ』との比較などについても書いてみたいのだけれど、今はともかく忙しいので、機会があればと思っている。
言い忘れたがこの映画決して駄作とか凡作ではない。そこらの映画に比べれば十分に楽しめるし良くできている。文句があるとしたら、あのテリー・ギリアムにしては、と、その一点だけなのだ。
★この映画パンフは買いです。というのも畏友、町山智浩氏らおバカ映画専門家多くが寄稿しているからであります。映画よりパンフの方が価値あるかも。