《前回の続き》
古本屋のくせに、本とは売るものではなくまず読むものだ、などと言うと、そもそも商売というものがわかっていない、心得違いをしているとお叱りを受けるに違いない。自分でもそう思う。しかし、自分の関心のある本、好きな本と出会ったのに、それを読みもしないで右から左へ売れる人の気がしれないし、それが売れていくばくかの金になったとしても何が面白いのだろうか。
恥を書くようだが、客から注文のあった本を発送に際して書き込みや線引きの有無の確認のために目を通し始めたら、つい面白くなって一晩かかって読み終えたこともあるし、読み終わらず送ってしまってから、その本のことが気になってたまらず、わざわざ古書店を回って新たに買い求めたことすらある。こんな話、同業者についこぼしたら「ほんまもんのアホや」と呆れられたが。
結局、自分は素人だということだ。いつまでたっても本当のプロにはなれない。このことは、昨年中何度もどうしてこうなのかと自問自答した。そして答えが出ないままパリに出て、古本を売る側から本とパリの古本屋を見てきて、今は一応答えが出た。それが古本屋は商売として考えると辛くなるから、当分は趣味として割り切ってやっていこうという結論だった。
このところ、どこで調べてくるのか、ウチにお宅のサイトを見たという電話がいくつかあり、もっとアクセス数を増やすためにはどうすべきか、売り上げアップのために「お手伝い」とか「ご提案」したいと言う。どうやらネット関連サービスの会社らしい。お宅は品揃えも良いし、かなりの品数もあるし、とお世辞言って、それでも月に30万は売り上げがないと苦しいですよね、などと水を向けてくる。前だったらそんな電話には余計なお世話だ、と怒ったかもしれないが、今はやんわりと、ウチは趣味としてやってるので別に結構です、と断われるようになった。
「趣味」というのは逃げだと思われてもかまわない。しかし、素人の趣味だとしても本を売ることに関わっていけないはずはないわけで、元々客にとっては、プロであろうが、本業であろうがなかろうが、まして素人が趣味として本を売ろうが、要は良い本が納得のいく価格で買えて満足できればいいだけの話なのだから、自称“末端古本屋”をこれからも続けていったとしてもかまわないだろう。
というわけで今年はアマゾンなどで不要な本を精力的に「処分」しつつ、自サイトに力を入れて改めて初心に戻って、自分の趣味に適った良い本を一冊一冊、丁寧に売っていきたいと思っている。
★そしていつの日かこんな小さくても趣味の良い店が開けたら‥‥