ラーメン食べたい~パリの「中華」及び世界の料理について・後
これは、単に食文化の違いということに尽きるわけだが、西欧の料理は全体としてスープ類の占める割合が少ないように思える。何のことか説明しないとわからないだろうから説明すると。
日本の食事は昔から一汁一菜といって、ごはんにおかずが一品、それにみそ汁、これにせいぜい香の物というのが基本だった。これは、今日でも残っていて、定食には必ずみそ汁かスープが付いてくる。たとえ格安の牛丼チェーンだって、どこもちゃんとみそ汁はサービスされる。ごはんには熱いみそ汁、というのが常に基本だ。
ところが、西欧では、今回フランスで何回も食事はしたが、中華のランチを頼んでも当たり前だが汁物は付いてなく、そもそもそうしたスープ類、つまりラーメンのようなメニューが置いてある店自体がごく少ない。フランスの料理に至っては、前菜、メイン料理、そしてデザートという簡単なコースでも、前菜にサラダなどと並んでスープがある程度で、これを先に飲み干さないとメインの肉や魚が出てこない。日本のように一緒に食べ、飲むことはできない。
パリに数多い「中華」の店も、日本のように、オヤジが厨房でガンガン火を使ってその場で調理する形式ではなく、既に出来上がった各種料理が、ケースの中にトレイに入れて並べられており、客はそれから選んで量り売りしてもらい持ち帰るタイプだ。勿論、イスやテーブルもあるのでそこでも食べられるのだが、電子レンジでチンして出される。決して不味くはないが、何か物足りない。それはその場で火を使わないからだ。調理場は大概が地下か別にあるようで作っているのを見たことがない。すべてが電子レンジで温めるだけだから、熱い汁物は置いてないというわけである。パリにはこうしたテイクアウトの店が多く、フランス人は忙しいしあまり家で料理しないから多く利用している。
真剣に探せばどこかに、オヤジがその場で火を使って調理してくれる本格的中華料理の店もあるはずだと思うが、ベトナム料理とかタイ料理と看板に出ていても大概がこうしたレンジでチンの店で、パリ滞在中、安いこともあってよく入ったのはこうした「中華」の店だけれど、ご飯類を食べながら日増しに熱いスープ類が飲みたくて、その思いがつのる先にはラーメンがあった。別に日本のラーメンでなくていいから、熱い汁物がたっぷり飲みたい!
考えると、かつて若い頃、一ヶ月もフランスにいたときだって、日本食が恋しくなったことなど全然なかったから、わずか10日間程度でこんなに汁物、ラーメン類が食べたくなるとは、老人力の高まりは、日本回帰を伴うもののようで、トイレが近いことも含めて増坊も本当のオヤジになったものだと自分でもつくづくあきれ果てたしだいだ。