05年冬パリ旅行・15
洋の東西を問わず古本好きはどこにでもいる。古書市で、熱心に古本を一冊づつ探索していたのは、パリの植草甚一J・J氏であった。
例えば、パリのノートルダム寺院でもいい、まさに風土と文化の違いでしかないのだが、おそらくヨーロッパを訪れた日本人の誰しもが感じることだと信じるが、これらの建築を前にしてその巨大さもさることながら、歴史と伝統そのものとしか呼びようのない重厚かつ荘厳な実在感にただただ圧倒されるに違いない。増坊も教会へ入るたび感嘆し、これこそが西欧だ、日本は逆立ちしてもかなわないとつくづく思った。この教会は、1163年に建立が始まり、およそ170年もかかって完成したという。完成からでも700年がゆうに経っているのも驚きだが、ヨーロッパではこうした建物はざらにあり、街中に古代ローマの遺跡も残っているし、さすがにパリにはないと思うが、地方に行くと中世の街並みがそっくりそのまま残っていて、ということは人々はその当時の建物で今もこれからも暮らしているのである。日本で言えば安土桃山時代の建物にである。これはひとえに地震のない国で石造りの建築だから成り立つわけで、紙と木を主体にしてきた火事と地震の多い日本では想像もできない話だ。
前置きが長くなったが、本というのも同じことで、本当の西洋の本、つまりモロッコ皮天金、背にバンドがいくつも入った美しくかつ重厚な本――おそらく17世紀か18世紀のものだろう――を前にして、おずおずと手は出ても、さて、もしこれを日本に持ち帰ったとしても、果たして日本にはこの本を収めるに足る本棚と書斎があるものかと考えざるえなかった。絵にふさわしい額縁が必要であるように、西洋の本にはそれに合う、映画で見るような重厚な本棚が必要なのであり、その部屋がある建物も当然年代物の石造りであるべきだろう。