05年冬のバリ旅行・5
帰ったら日本は出発前とうって変わって予想外の厳しい寒さとなっていた。行く前から少しひいていて、パリでは暖かかったこともあって小康状態だった風邪が今悪化して苦しい。
さて、これは本屋に限らないことだが、パリの魅力の大きな要素に、未だ個人商店が多く存在していることが挙げられる。
昔ながらの地域に密着した個人経営の店が、後から進出してきた資本力のある大規模な小売チェーンの出店により、取って代わられ廃業をよぎなくさせられることは資本主義の流れというか、世界的傾向だろう。東京の郊外にある増坊の住む町自体は、都心へのベッドタウン化し人口は増えているのに昔ながらの商店街はさびれ、閉店が相次いでいる。子供の頃からあった駅前商店街の本屋や薬屋、酒屋など近年続々潰れて代わりに少し離れたところに巨大なショッピングセンターができ、休日になると住民はそこへ車で出かけまとめ買いをしている。
だが、ここパリを見る限り、10年前よりはスーパーが増えた気もするが、未だパン屋を筆頭に、個人経営の肉屋、総菜屋、魚屋、野菜など生鮮品や食料品全般を扱う店、そして雑誌・文具店、本屋、古本屋などが地域ごとにがんばっている。これに、タバコの看板を出して雑貨なども売っているものの実質はカフェや軽食の店、小さなレストランやブラッセリー、そしてケパブやグリークサンドなどが専門の中近東料理やタイ・ベトナム、中華などのテイクアウトもできる簡易食堂も加わって今のパリという街を形成しているのだ。近年は移民の増加を受けてこれにアフリカ料理や、アフリカの食材を扱う店も加わり、寿司はもちろんのこと、食に関する限りパリは百花繚乱、まさに人種、民族のるつぼと化している。
増坊にとってバリの味と匂い、音とは、アラブ料理やお香の匂いやコーランであったりする。
それらの個人商店は休みも多く、コンビニのように年中無休24時間営業ではないから便利ではないけれど、コンビニの持つ無機質な均一性の代わりにそれぞれ店ごとに個性ある有機的暖かみに溢れている。凱旋門やエッフェル塔、シャンゼリゼがイメージするオシャレでスノッブなパリも今もあることはあるが、現実を見る限りN・Yよりも多種多様な人種が共生するエキサイティングな街、それがパリなのだ。増坊がパリをこよなく愛する理由はこうした商店の元気さ、食材の多様さ故である。そしてこれに曜日ごとに朝市があちこちの広場や大通りに立つ。
★これは新刊本屋の店先。路上にびっしり並べられた各種ポストカードのスタンドで店自体は隠れて見えやしない。この店は絵本や子供向け書籍を専門に扱っていた。