「改革」の実態を知ってほしい
ついでにもう一つ首相のウソを告発すれば、「民間企業になれば税金を納めるようになるから税収が増える」とも言っているが、郵政公社はこれまでも税金の代わりに利益の五割を国庫に納付しているわけであり(約1,300億円)、仮に民営化されて赤字経営となった場合、国に納める税金はゼロとなるわけで、それをまかなうためには民主党の言う通り消費税を10%以上にしないと国の借金が1000兆を上回ると言われている――とは局長の談である。
そして、分割民営化した後も過疎地の郵便局はなくならないなどとも言っているが、現在地方の郵便局のほとんどは赤字で、三事業一体であるから郵貯・簡保の黒字分を補填して過疎地でも何とか郵便事業は成り立っているわけで、これを分割したならばやっていけるわけがない。
首相は、「郵便局は国家公務員でなくてはできないのか。民でできることは民で!」と叫ぶが、例えば分割民営化されたとして、北海道の、公共交通もないような過疎の村の場合、年金暮らしの爺さん婆さん相手に郵便局を開いてても絶対に儲からないと思うし、知床の果ての村に住む人宛に手紙を届けるのは今のように全国至る所80円均一では絶対に無理なはずでうんと高く特別代金を取らないとやっていけるわけがない。増坊も商人の端くれとしてはっきり言えば、自分ならそんな村では儲からないのはわかっているから商売はやらないし、どう工夫しても商売を続けていけるわけがない。まあ、うんと高い手数料を受益者負担として搾り取る厚顔なやり方もあるかもしれないが、それよりは今の三業一体のシステムを維持したままの方がその地に住む人たちにとって一番安心で最適なのは言うまでもない。また、民営化されたら郵便局がそのものが減るだけでなく、口座を新たに開設するにも維持管理の名目で金を取られ、利用のつど手数料が引かれるようになるのも間違いない。それでもこの「改革」に意義を認め支持できるだろうか。
結局、首相がここまで詭弁とウソを並べ立てても民営化に固執するのは、もっと違う目的――彼の“改革”を後押ししている「特権階級」、つまりアメリカや日本の銀行業界、 保険業界が、郵便局が預かっている郵貯、簡保の資金を吐き出させ奪い取ろうとする目論見があるからではないのか。そのために民間という土俵に郵便局をひきずり下ろして勝負させようと思っているからだ。そもそもこの民営化法案そのものが“ブッシュの陰謀”と巷間囁かれているのだから。
こうして考えてみると官にしかできないことをやっているのだから、郵便局は今のまま民営化する必要はどこにもないというのが結論だ。郵便局をなくして、全国に津々浦々あまねくある郵便ネットワークを分断し破壊することがどうして改革であるもんか。
※むろん一利用者として今の郵便局には実際のところ大いに不満もあり腹立たしい思いも 多分に感じている。が、それは今回の民営化まずありき、という流れとは関係なく、改善すべき問題としてこれからも指摘し改善を申し入れていくつもりだ。