愚図の大忙しなのだ
注文を受けてから本を発送する話だった。
まず、アマゾンでも自店舗でも出品本が売れた連絡メールを受けて、慌ててその本を探す。何百冊も出品していると、その本自体を見つけだすのも一苦労だという場合もままあるが、それはまあ置いといて。本が見つかってからの話。
以前、最初の頃は、お客様にすぐさま「在庫確認及び発送連絡」メールを出していた。ところが、本自体みつからなかったり、梱包にあたって、よくよく細かく見直してみたら不具合などがあるのに気がついたり、と再度失態とお詫びのメールを送ることになったりしたので、今はともかく、必ず本自体を確認して、一通り中身もチェックしてから連絡するようにしている。そして梱包して宛名を貼り付けてヤマト運輸に持って行く、と他の店ならおそらく一連の作業は、一冊あたり5分程度で済むのだろう。ウチではそうはいかない。
まず一通りページを繰って状態を確認する。それで問題なければ注文主に、在庫を確認したことと発送日時とおよその到着日などをお知らせしたメールを送信する。
次にアマゾンからの場合、本が売れた連絡メールの中の「納品書」の部分を紙に打ち出す。同時に自前の顧客名簿に番号をつけてそのメールを保存する。
それからその本をもう一度丁寧に中身、背、小口、天地とチェックする。カバーはクリーナーを使いティッシュで拭いて綺麗にする。※ある程度汚れて古い感じの本でもこれをするとかなり見違えるようになる。天などのホコリ汚れは歯ブラシなどでできるだけ落とす。
もう一度中身も含め全体を確認の上、OPP袋に入れて空気を抜いてテープで貼り密封する。※街の古本屋でアイドル写真集などがビニール袋にパックされ密封されているのと同じように。
それをプチプチ、――名前を失念したが、エアー何たら言う、緩衝材――で包む。
そして本のサイズに合わせて、角形クラフト封筒に入れ、宛名を貼って、裏に当店の住所印を押してようやく完成、送り状に本の番号と中身もメモして発送に持っていく。
この一連の動作に、1冊程度なら大して時間はかからないが、3冊以上ともなると、午前なら朝食後始めても昼近くまで、午前中全部かかってしまうのだ。本当の話。もっと簡略化できると思うし、他の店に聞いたところ、保護のためプチプチには包むけど、OPPパックには入れない、とか、プチプチは使わず、白い厚手のビニールにくるむ、とか、巻きロールにそのままくるんで、緩衝材と封筒を同時に兼ねる、とかいろいろだった。当店の場合、プチプチは新品ではなく、近所の工場が出したゴミの再利用だから、それだけだと難ありのときもあり、あくまでも緩衝材としてのみだけにプチプチを使っているので、やはりOPPは省略できないのだ。
だとしても時間がかかりすぎると思われよう。本の梱包は同時にはできない。常に一冊一冊この手順をふまないと増坊はバカだから、ついうっかりして中身を間違えて発送することになる。コワイのは誤送で、一回だけだが、アマゾンから同時注文のお客様2名の本を取り違えて送ってしまい、本来の客に正しい本が届くまで一月以上も時間がかかった。もちろん全額赤字。だからいやがおう上にも慎重にならざるをえない。“愚図の大忙し”とは故山本夏彦翁の謂いだが、そんなで愚図は愚図なりに時間とテマをかける。結果1日の長さは決まっているので常に大忙し、となるわけなのだ。