お客から代金をどうやって払って頂くか
前回は、当店が注文を受けたお客様に本を発送し、配送業者がお客様方に届けたはずなのに本が“消滅”した話を書いた。まあ、約300冊アマゾンを通して注文を受け、ヤマト便を利用して発送していれば1冊ぐらいはこんなことがあっても仕方のないことなのかもしれない。発送の問題はとりあえず、このヘンで置いとくとして、古本屋としてもう一つさらに重要な問題がある。
売れた本の代金をどうやって回収するかだ。
まあ、お客の支払い方法の問題なのだが、何だかんだ言ってもアマゾンは、送料を含んだ代金をお客様がカード決済で先払いの上での注文だから、販売者が客から代金を取りっぱぐれるという心配はない。マージンをアマゾン側に引かれたとしても安心といえば安心だ。送った本について客とトラブルのあった場合など面倒だといえばそれもまたあるが、それは別として、自店舗での本の販売の場合は、かなりの確率で代金を支払ってくれない客に遭遇するのだと聞く。
たぶん多くのネット古書店、いや通常の古本屋さんでも同じだと思うが、支払い方法として、商品先送りで、代金は本の当着後、郵便振替などで支払ってもらう“お客の善意信頼”方式が多いはずだ。他にも「事前支払い」方式とか、「代金引換配達」なども考えられる。だが、一番早くお客の注文にお応えし客にとって負担の少ない方法が商品先送りなのである。最近では、ネット上の銀行を利用し店の口座に先に客から振り込んでもらって確認の上で発送、というようなこともできるのだろうが、あまり利用している人の話を聞かないのでそれはそれでテマが(誰の?)かかるのかもしれない。
幸い当店ではこれまで未払い――本は送ったのに客が代金を支払わないというトラブルは起きていないが、これは増坊の日頃の行いが良いから起きていないのではなく、単に売れていないので絶対数が不足しているからまだ出会わないだけにすぎず、確率の問題として注文数が増えて、何百人だか一定以上の客が来ると中には不届き者が出てくるのだと考えられる。いくらメールや電話で、手紙で催促しても全然支払ってくれない客にどういう対応ができるのか。古本屋のオヤジの「日記」サイトを読むと、どこもこうした不払い客とのトラブルに怒りと悩みで苦慮していることがこぼされている。
『文雅新泉堂』店主の野崎正幸さんは、こうした不届き者を相手に裁判、つまり代金支払い請求訴訟をおこした。2000円弱の本の代金を支払わない客相手にだ。多くの店が悪質な客に泣き寝入りをしている中でこれは一つの偉業だと思う。感心した。些細なことでも悪事は赦さず。桃太郎侍のような人だ。だが、裁判にかかる諸々の費用など考えると哀しいかな、「日記」でグチをこぼしている方が断然お得なのである。だからといって野崎さんを笑う資格は誰にもない。人のやらないことをやる、彼は人として立派だ。闘わない人は闘う人を笑うなかれ。ファイト!野崎さん!