バロンたちの公演 必見の価値あり
ああ、楽しかった!というのが観終わったあと、自然に口をついて出てきた言葉だ。バロンと世界一周楽団による浅草東洋館における「ボードビル・アゲイン」と題した公演である。
台東区後援のしたまち演劇祭の一環として、今月8日から13日月曜まで夜一回、計6日間、浅草東洋館、元のフランス座で今連日行われている。
増坊は、バロンたちのCDを受けつけで売るために、初日、3日目と通っていて、昨日は所用で行きたくても行けなかったのだが、今晩(12日)と明日最終の楽日にも行っている。その感想だが、正直、初日はいろいろ準備不足とか不備が重なり、あのバロンでさえ珍しく緊張していたのか硬さがみられ、観客にもそれが伝わったのか、全体的にも出来はもう一つであった。観ている自分もハラハラドキドキしてしまい、もう一つ楽しめなかった。
しかし、一日おいて3日目に行ったときは、初日の問題点はすべて改善されしっかり挽回されていた。いつものバロン的軽妙洒脱さがちゃんと戻って、その自由闊達さが他のメンバーにも移ったのか、バンドも安定していて存分に楽しめた。こんなに面白い公演は近年稀だと断言しても良いと思える出来であった。
ボードビルが何であるかはともかくとして、かつてのクレージーキャッツや、シティ・スリッカーズ的音楽を使ったギャグがふんだんに盛り込まれていて自分はいたく感心した。それは、特に後半のメンバー全員による音楽に拠る世界一周旅行の場面でいかんなく発揮され、大いに笑わされた。これはドリフには絶対に出来ない。
音楽で笑わせる、つまり楽器を使ったギャグというのは、クレイジーのように本来そのプレイヤー自体がしっかりしたテクニックの持ち主でない限り不可能なわけで、その点、全員がキャリアある超絶テクの持ち主である世界一周楽団の面々は、バロンのバックバンドという枠を超えて、その素晴らしい才能を十分に示してくれた。実に芸達者な彼らはあたかもクレイジーキャッツの再来を思わせた。そのシーンだけでもこうした音楽ギャグに関心を持つ方は必見といえるだろう。今こんなことが出来る輩は他にどこにも絶対いない。素晴らしすぎる。
全体的には、音楽を使わない場面でのギャグが弱いとか、構成面でやや課題を感じさせられなくもないが、これは十分に金がとれるしっかりしたショーとして大いに評価できる。エノケンから金語楼、トニー谷、てなもんや三度笠から、夢で逢いましょう、デン助劇場まで、子供ながらリアルタイムでこの目でずっと観てきた自分が言うのだからどうか信じてほしい。これは本当に面白い。小手先の芸でお茶を濁していない。まさしく本物の芸である。
今回の公演でバロンを改めて見直した。今はこの男と知り合い、彼のCDを手がけることが出来たことを心から光栄に思える。この東洋館でのショーは、今晩を入れてあと二日、二回だけだ。バロンたちは日ごと調子をうなぎのぼりに上げている。いよいよ楽しみである。あと二回。どうかまだ未見の人はぜひとも足を運んでほしい。このショーは何度でも観る価値がある。憂鬱な気分が吹っ飛んだ。面白くて楽しくハッピーな気分にさせてくれる。どうか多くの人に観てほしく願う。
ボードビル万歳!!!