含羞の人カマケンこと鎌倉研 肝心のライブの様子について書いていなかった。カマケン氏は、このところ昨秋もここ吉祥寺「のろ」で須藤もんさんとジョイントを演っているが、今回の村上律さんとの3Daysツアーは、大森「風に吹かれて」川口「ルーツ」と続き、ラストが「のろ」で、打ち上げを兼ねていたのである。
鎌倉研と村上律というかなり異色の顔合わせに、当人達も緊張したとのことだったが、意外にもしっくりまとまり違和感なく十分楽しむことができた。というのは、カマケン氏のほうが、大先輩律さんを立てて、後ろに控えてしまった感があったからで、研さんのソロでの実力を知る者としてはやや物足りなく思えたことも記しておく。
ライブは、前半はまず研さんがソロで、後から律さんがドブロとバンジョーで加わり、いったん休憩を挟んで、後半はまず律さんがバンジョーのソロで、それに後からギターで研さんが加わって二人でという展開で、あのイサト氏の代役を振り当てられた研さんの緊張ぶりが傍から見ると伝わってきてそれもまた微笑ましかった。
個人的願望としてはもっと先輩村上律をくってやるぐらいの気概を見せてほしいような気もしたが、それができないのが研さんの実直な人柄で、じっさいの話、氏は、一見豪放磊落のイメージがあり、ステージでは偽悪的漫談が売りの人だが、当人は至って気配り心配りのまっとうかつ大変真面目な方であって、そのギャップが実に面白い。苦労人の上に、サービス精神旺盛な関西人気質があの抜群の笑いを呼ぶ抱腹絶倒の語り芸となるのであろうが、日本のフォークシンガーに一番欠けていたのは、そうした観客サービスであり、音楽に限らず今でも芸術とはその芸だけで表現すれば良いという頑なな至上主義が、この国でエンターティメントの登場とショービスの発展を阻害してきたことを思うとき、彼のようなタイプのシンガーは稀有な存在だと気がつく。願わくばこれからも語りで大いに笑わせうたでシンミリ泣かせる他に類のないカマケンワールドをさらに磨いて、ショービジネス風味のフォークシンガーとして我々ファンを楽しませてほしい。
それとこれは残念なお知らせだが、「のろ」は直接マスター加藤さんに確認したところ、やはり噂どおり今月いっぱいで閉店するとのことで実に残念でならない。33年間の歴史ある伝説的なライブハウスがまた一つ消えていく。今まであまり顔を出さなかった者として支えきれずに申し訳ない思いでいっぱいだ。今月末までの間、できるだけ都心に出た際は寄ろうと考えている。皆さんもどうか長年の労をねぎらってください。