価格破壊はいいことなのか
今の時代はデフレだか、何だか知らないが、ともかく何でもバカ安の時代で、もの皆どんどん価格が下がって、100円ショップで日常品からちょっとした衣類、食料品さえも手に入る、とってもイイ時代だと言えよう。でもそれは買い手としての立場だけのことで、買い手と売り手とは実は表裏一体であるから安くていい、ということは儲けも当然少なく、売り手として働く者の給料も安くなってしまう、いわば悪循環に陥っている。モノが売れない。売れないから安くする。安くした中で競合し、さらに安くせざるえない。結果、儲けはほとんど出ない・・・。これが今日の不況の一因だと思うが、古本の世界もまったく同じで、特にアマゾン市場では本を売るため売り手同士が日々しのぎを削って、結局1円でも他の出品者より安くしてカタログの上位に載って目立とうと焦る余り極端な価格破壊が起きてしまっている。マーケットプレイスを一度でも覗いた人は、そこでの中古商品、特にベストセラーの古本についてはあまりに安すぎると目をむくはずだ。
増坊が知る限り、こんなに本の値段が安い時代はこれまでの人類の歴史ではなかったのではないか。いや、これは古本価格についてであり、新刊書や、新刊文庫はそれなりにベア並に時代に合わせて価格が上がり、昔は安いイメージのあった文庫でも今は少し厚いとすぐ千円を超してしまう。何でも安くなる時代に、新刊本だけが何故安くならないかというと、そこに競争原理が働かない、再販制度とやらいう特殊な枠組みがあるからだそうで、ゆえに出版不況が恒久化しようとも何とか出版社は持ちこたえているというのもそこに関係がある。
何でも安いことはいいことだ、と思うが、結果、自ら首を絞めることになっていないか、買い手としての気持ちはおいといて売り手として言う。極端な安売り競争は商人の命を縮めることに繋がる。